vol.01 土壌改良と堆肥

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問題 vol.01
土壌改良と堆肥

柴田忠裕先生から、園芸に関する問題を出題!
問題文が正しいと思えば「⭕」、間違っていると思えば「❌」で解答してください。

第1問

土壌改良に投入する堆肥は、肥料効果が高い。

残念! 不正解です
正解です!

土壌改良に使われる堆肥は、稲わら堆肥、牛糞堆肥、馬糞堆肥、バーク堆肥、腐葉土などが知られている。これらは肥料効果もあるが、堆肥を投入する主目的は、理化学性の改善にある。すなわち、保肥力、保水力、通気性の改善に重きがある。

また、これら堆肥は土壌微生物の生息場所になり、餌となる。微生物は有機物や肥料成分を分解し、植物が吸える形にしてくれる。俗に「生きた土」と呼ばれるものは、土壌微生物が活発に活動する土と言い換えられる。

完熟牛糞堆肥
完熟牛糞堆肥
第2問

土壌に混入する腐葉土、製品によっては植物ばかりか人間にも悪影響がある。

正解です!

園芸店で販売される腐葉土には、倍ほどの価格差がある。これには作成までのコストが反映されており、安いものは数か月で促成的に作られ、落ち葉そのものと疑うような分解不十分なものもある。これを土に加え苗を植え付けると、そこで分解が始まり、植え付けた植物の根が発生したガスで傷んだり、分解過程でチッソを消費するため、チッソ飢餓を起こすこともある。従って、十分発酵し分解した商品を選ぶ必要がある。

また、発酵が不十分なものには、レジオネラ菌が入っていることがあり、体調不良時や免疫が弱った高齢者が吸い込むと、肺炎を起こすことがあるといわれる。発酵が進んだものは、発酵熱により自ら雑菌を軽減しているが、未熟なものはこれがないからだと思われる。

右から未熟、中程度、完熟の腐葉土
右から未熟、中程度、完熟の腐葉土
残念! 不正解です
第3問

微生物資材をうまく使うと、土壌の微生物相の改善や病害虫の抑制に有効である。

正解です!

日本は東西に3000㎞、日本海側、太平洋側、低地、高地とさまざまな気象条件がある。さらに、微生物資材を使う方の技量や農家個々の環境などで効果が異なる。微生物はある特定の環境下で特定の効果を発揮するもので、その微生物の生育に適さない条件下では効果が異なる。そのため宣伝広告を当にして使用しても、使用条件によって効果の再現性が低くなることがある。自分に合った微生物を探し当てることが重要だ。また、近隣山野に生息する常在菌の利用もその一つである。

右から、除塩してない牛糞堆肥0、2.5、5、 10、20%混入で育てたノリウツギ
右から、除塩してない牛糞堆肥0、2.5、5、 10、20%混入で育てたノリウツギ
残念! 不正解です
第4問

牛糞堆肥は、ただ混ぜればよいだけの手間いらずの堆肥である。

残念! 不正解です
正解です!

確かに完熟牛糞堆肥は土壌改良効果が高いが、たくさん入れればよいわけではない。牛糞堆肥は、牛の生育環境を整えるため、牛舎に敷き詰められた稲わらやバークチップなどと糞尿を制御した方法で堆積または攪拌し、腐熟の過程で発生する熱により微生物学的に安定化させ、水分が飛んで軽くなったものである。しかし、糞尿に含まれる塩分はそのまま蓄積しており、多量に投入すると濃度障害を起こす。特に乳牛は、頻繁に岩塩をなめるため、塩分の含有量が高い。塩分濃度障害を軽減するためには、多量の水分で洗い流したり、数か月雨に当てたりするのも良い。

岩塩が備わっている乳牛舎
岩塩が備わっている乳牛舎
第5問

先進諸外国では、循環型の灌水を取り入れるナーセリーが増えている。

正解です!

EU やアメリカなどの国々では、日本と比べて降水量が少ないため、水が貴重であることと、環境面の保護のため、灌漑水を河川に流すことなくプールし、その水を殺菌し再利用している。そのため、コンテナ栽培場所は傾斜がついており、最終的に池などに水が集まるようになっている。オゾンを利用した殺菌を行うナーセリーもある。傾斜が付いている圃場は、大雨が降った時でも水が滞水しないため、根腐れの発生が軽減される。日本でも傾斜をつけた場所での栽培を取り入れてもらいたい。

灌漑水はこの池に溜まる
灌漑水はこの池に溜まる
残念! 不正解です

園芸知識コラム vol.01

栽培家にとって園芸関係の書籍はバイブルであるが、その書籍の内容が100%信頼できるかというと疑問が残る。南北に長く中央高地で太平洋と日本海側に分かれる日本列島は気候的に大きな違いがあり、同じ管理では栽培できない。そこに地域ごとに異なる土壌や栽培者の技量差が加わるため、書籍は参考程度にとどめ、各自、各地域に適応する応用技術を構築する必要がある。そのためには、とにかく栽培経験を積むことである。

柴田忠裕

出題者:柴田忠裕

千葉県生まれ。新潟大学農学部、同大大学院農学研究科卒業後、現千葉県農林総合研究センター花植木研究室に勤務し、コニファーの栽培技術や屋上緑化素材であるマット植物、植木盆栽類の輸出技術の開発にあたる。平成26年3月に定年退職し、現在は(公社)千葉県園芸協会種苗センターセンター長、花卉懇談会会長を務める。

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