vol.05 連作障害

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問題 vol.05
連作障害

柴田忠裕先生から、園芸に関する問題を出題!
問題文が正しいと思えば「⭕」、間違っていると思えば「❌」で解答してください。

第1問

匍匐性の草本植物は、数年後に植えた場所から離れた場所に移動するものが多い。

正解です!

宿根バーベナやアジュガ等の匍匐性草本類は、植えた場所から放射状に蔓(茎)を伸ばし、接地点から発根し、そこを起点としてさらに勢力を拡大する傾向にある。数年後には、当初植えた場所から離れたところに生育の中心地がリング状に形成される。この現象は種の保存の一手段と考えられ、次世代が良い条件の場所を見出す最善の方法であると思われる。

宿根バーベナの植え付けて5年後、中心部に生じた空地
宿根バーベナの植え付けて5年後、中心部に生じた空地
残念! 不正解です
第2問

草本植物同様に木本植物も、長期間栽培を続けると生育が低下するものが多い。

残念! 不正解です
正解です!

山野の樹木は長期間その場所にとどまり、長期にわたり生育するものがほとんどである。例えば屋久島にある縄文杉は数千年前から同じ場所に生えており、巨大木も各地に点在している。しかし、草本類の多くは長期間栽培し続けると、徐々に生育が衰え、最終的にその場所からいなくなるものが多い。筆者の感覚的な観察ではあるが、ススキ等イネ科、ギボウシ等ユリ科の植物は生育の衰えが比較的少なく、長期にわたりその場所にとどまるが、より長期になると中心部から生育が衰え始め、株の中心部が空洞化する。

樹木は長期間同じ場所で成長を続ける
樹木は長期間同じ場所で成長を続ける
第3問

連作障害の原因の一つは、アレロパシー物質の蓄積による。

正解です!

アレロパシー物質はわが国では「他感物質」と訳され、ある植物が出す他の植物の生長に関与する物質を指す。これは連作障害の要因の一つとされている。例えば、セイタカアワダチソウは他の植物を忌避する物質を出し、他の植物の生育を抑制するが、その後自分が出した物質で自家中毒を起こし、やがて自滅する。このようにアレロパシー作用が強い植物は1カ所に長く定着できない場合が多い。

セイタカアワダチソウ
セイタカアワダチソウ
残念! 不正解です
第4問

輪作あるいは田畑転換は有効な連作障害対策の手段である。

正解です!

連作障害の発生要因は、①アレロパシー物質の蓄積 ②特定養分の欠乏 ③塩類の蓄積による濃度障害 ④特定の病害虫の増加等が考えられる。連作障害を回避するための対策としては、以上の発生要因がない新たな地で栽培したり、いくつかの畑を順番に移動(輪作)して栽培する。また、畑として使っていた水田畑に水を入れ水田とし、水稲収穫の後は水を抜き畑として使う。この結果、水溶性の物質が流乏したり病害虫が軽減され、毎年同じように栽培が可能となる。千葉の安房地域に広がる花畑の多くは、この田畑転換を取り入れている。

秋から春は花畑、春から秋は水田(千倉町)
秋から春は花畑、春から秋は水田(千倉町)
残念! 不正解です
第5問

木炭片や活性炭を投入しても、連作障害は解消できない。

残念! 不正解です
正解です!

木炭は水質浄化剤として古くから使われている。木炭は多孔質であり、物質を吸着する能力がある。当然、連作障害の要因物質も吸着する。活性炭は木炭をより高温で燃焼したものであり、木炭の何倍も多孔質となっている。A社によると10gの活性炭の表面積は東京ドーム1個分であると試算されている。当然、広い表面積を使い連作障害の要因物質も容易に吸着するため、連作障害の軽減にある程度は効果を及ぼしている。

園芸知識コラム vol.05

コロナが急拡大し、感染者数もうなぎ上りにある。コロナ禍では、通信販売で物を買い、宅配出前を取る傾向が高まったが、植物の世界においてもホームユースの増大を受け、植物を栽培し始めたり愛でる人が多くなってきた。コロナ禍以前の倍以上の売り上げを記録した店も少なくはないと思える。今は、コロナが一段落した後も植物を愛でる人が定着するための対策を練る時である。ただ栽培するだけから、食べたりお茶にしたり、香りを楽しんだり、新たな楽しみを教示し、植物栽培の定着を図る必要があろう。

柴田忠裕

出題者:柴田忠裕

千葉県生まれ。新潟大学農学部、同大大学院農学研究科卒業後、現千葉県農林総合研究センター花植木研究室に勤務し、コニファーの栽培技術や屋上緑化素材であるマット植物、植木盆栽類の輸出技術の開発にあたる。平成26年3月に定年退職し、現在は(公社)千葉県園芸協会種苗センターセンター長、花卉懇談会会長を務める。

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