vol.23 開花

問答形式で学ぶ園芸知識問答形式で学ぶ園芸知識

問題 vol.23
開花

柴田忠裕先生から、園芸に関する問題を出題!
問題文が正しいと思えば「⭕」、間違っていると思えば「❌」で解答してください。

第1問

一般に樹木の花は、日当たりが良い南面の方が多く北面は少ない。

正解です!

 日当たりが良い南面は光合成が活発で、光合成産物である炭水化物の生産量が多く、開花に有利に働く。その炭水化物は維管束系が異なるため、南面から北面へは移動しない。植物は光合成由来の炭素(炭水化物)と根から吸収したチッソの割合、C/N率(carbon to nitrogen ratio)でおおむね開花がコントロールされる。すなわち、光合成が活発で炭素の割合が高いと開花が促され、チッソが多いと枝葉を伸ばす栄養生長につながる。

<キャプション1.1>
炭素(炭水化物)は葉で合成され、地下部や葉、果実などへ移動
<キャプション1.2>
南面は光合成産物が多い
<キャプション1.3>
チッソは根で吸収し、地上部へ移動
残念! 不正解です
第2問

斜上する枝を紐等で引き下げ(下垂させ)ると、その影響で株全体の開花年齢が早まる。

残念! 不正解です
正解です!

 根から吸収した水は蒸散活動で植物体内の圧が低下するため、それに伴い上へと引き上げられるが、光合成産物は重力により下方に運ばれる。枝を下げても水は圧力により枝内へ運ばれるが、光合成産物は重力に逆らえずその枝内にとどまる。そのため、枝内のC/N率が高まり開花が早まるが、その効果はその枝のみである。

枝下げ
第3問

一部の枝の皮を幅数cm分環状に剥ぎ取ると、株全体の開花年齢が早まる。

残念! 不正解です
正解です!

 枝は養水分が行き来する維管束が縦方向に走り、皮に近い部分は光合成産物を下に運搬する師管、その内側は根で吸収した水や栄養素を地上部に運搬する導管が走っている。皮をむく(環状剥皮)と師管のみ剥ぎ取ることになり、その部分より上でつくられた光合成産物が転流する場を失い、その枝内にとどまる。このためC/N率が高くなり、結果的に生殖生長、つまり開花結実が促進されるが、株全体への効果はない。

<キャプション3>
環状剥皮
師管
導管
形成層
樹皮
同化産物が移動
水が移動
第4問

放射状に伸びる太い根を数本切ると、株全体の開花年齢が早まる。

正解です!

 根は放射状に伸び、広範囲から養水分を吸収している。そのうちの何本かを切断(根回し)すると、無傷樹と比べて養水分の吸収が削減され、結果的に分母のチッソ量が減るため、C/N率が高まり開花促進方向に働く。その時、全ての根を切断すると、倒伏の危険性が高まるため注意する。

<キャプション4>
断根
たくさん切ると倒伏や品質悪化を招く
残念! 不正解です
第5問

アミノ酸の葉面散布は、光合成を補完する。曇天が続く場合、その効果は顕著である。

正解です!

 植物は光合成産物と根から吸収したチッソを原料として生成したアミノ酸からタンパク質を合成し、植物体を形成する。光合成産物とチッソのどちらかが足りなくてもアミノ酸の生成量は低下する。光合成が低下する低日照時にアミノ酸を葉面散布すると、直接アミノ酸が取り込まれてタンパク質合成に利用され、光合成の補完的な働きをする。光合成が活発な状態でアミノ酸を処理すると、光合成産物を使うことなくアミノ酸が合成されるため、余った産物は花や果実の充実に使われる。

<キャプション5>
グルタミン酸の散布で即タンパク質合成
ペプチド結合
グルタミン酸
各種アミノ酸
タンパク質
器官生成
窒素同化
硝酸(N)
アンモニア(N)
根から吸収
残念! 不正解です

園芸知識コラム vol.23

 近年ナチュラリスティックガーデンの人気が高まっている。ナチュラリスティックガーデンは、植物が持つ本来の姿、即ち自然の形を自然風に組み合わせた庭園で、四季の展開を動画のように体感できる動きのある景観が演出できる。新・宿根草主義(New Perennial Movement)とも呼ばれ、わが国でも緑化の中心的な存在になりつつある。以前のガーデンは、刈込、施肥、灌水等人による管理が不可欠な園芸植物を中心に造られたり、成型庭園であったり、植物のコレクション展示のような庭が多かったが、これからはナチュラリスティックガーデンのように自然を感じるガーデンの需要が高まると予想される。造園関係者も自分の目で情報収集し、これからの作庭の一要素として取り入れてみたらどうだろう。

柴田忠裕

出題者:柴田忠裕

千葉県生まれ。新潟大学農学部、同大大学院農学研究科卒業後、現千葉県農林総合研究センター花植木研究室に勤務し、コニファーの栽培技術や屋上緑化素材であるマット植物、植木盆栽類の輸出技術の開発にあたる。平成26年3月に定年退職し、現在は(公社)千葉県園芸協会種苗センターセンター長、花卉懇談会会長を務める。

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