vol.16 針葉樹

問答形式で学ぶ園芸知識問答形式で学ぶ園芸知識

問題 vol.16
針葉樹

柴田忠裕先生から、園芸に関する問題を出題!
問題文が正しいと思えば「⭕」、間違っていると思えば「❌」で解答してください。

第1問

ひと昔前までは、インドゴムノキやシェフレラは都心部のごく限られた場所以外での越冬は困難であったが、今は23区内や西南暖地では楽に越冬するようになった。

正解です!

100年前と比較し、地球の平均気温は1℃近く上昇した。以前は都心部のコンクリート建築で囲まれた場所以外では露地での越冬が困難であったインドゴムノキ等は、地球温暖化が進み、より広範囲の場所で越冬可能となった。

都心部では傷みもなく越冬するシェフレラ
都心部では傷みもなく越冬するシェフレラ
残念! 不正解です
第2問

ガーデン材料やアロマの原料となるメラレウカは「ティーツリー」の名で流通しているが、都心部以外は露地での越冬が困難である。

残念! 不正解です
正解です!

抗菌力が強くさわやかな香りを放つメラレウカは、ガーデニングやアロマの世界で人気が高い。オセアニア原産の植物で耐寒性は強くないが、大きな株ほど耐寒性は高まる。都心部以外でも、根が張ったある程度の大きさの株なら、簡単な防寒対策を施せば越冬可能である。

メラレウカ。都心部では楽に越冬するが、郊外では防寒対策が必要。特に苗は寒さに弱い
メラレウカ。都心部では楽に越冬するが、郊外では防寒対策が必要。特に苗は寒さに弱い
第3問

ゴッホの絵にも描かれるイトスギの仲間は、地球温暖化が進展したため、ほぼ全国的に栽培可能となった。

残念! 不正解です
正解です!

イタリアイトスギ、アリゾナイトスギ、モントレーイトスギ、カシミールイトスギなど、世界にはたくさんのイトスギがあり、地名から命名されているものが多い。多くは温帯の原産で、耐寒性は強くない。そのため、雪が少なく極寒の道東や高冷地での栽培は困難である。

寒さは苦手なイタリアンサイプレス・スワンスゴールデン(ニュージーランド・オークランドで撮影)
寒さは苦手なイタリアンサイプレス・スワンスゴールデン(ニュージーランド・オークランドで撮影)
第4問

洋風な針葉樹、すなわちコニファーは、紫外線が多く気温の日較差が大きい中山間地地域や北国で育ったものの方が発色が鮮やかである。

正解です!

コニファーの特徴の一つが葉色で、特に青色はコニファーがもつ最大の魅力となっている。また、黄色の葉を持つものも多く、カラーコーディネートに欠かせない存在である。この葉色は、紫外線量や気温の日較差が大きいほど鮮やかになる傾向が見られる。従って、中山間地域や北国の方が鮮やかに発色する。

コノテガシワ・ローズダリス。日較差が大きい場所は発色が良い
コノテガシワ・ローズダリス。日較差が大きい場所は発色が良い
残念! 不正解です
第5問

年末にクリスマスツリーとして購入したゴールドクレストの鉢物の利用後は、露地に植えると良い。

残念! 不正解です
正解です!

ゴールドクレストは価格も手ごろでクリスマスツリーとして人気がある。利用後は露地植えする人もいるが、生育が旺盛なためあっという間に大きくなり、しかも葉が密生して柔らかなため、カビやすく、茶褐色に枯れ込みやすい。樹体を制限し、殺菌剤などを的確に散布すれば制御できるため、放任栽培は極力避けたい。

ゴールドクレストの生け垣。ところどころにカビによる葉枯れが見られる
ゴールドクレストの生け垣。ところどころにカビによる葉枯れが見られる

園芸知識コラム vol.16

「植木の需要が減った」と生産者の嘆きが聞こえる。輸出も減り、万博や花博関連の需要も先が見えない。景気が上向いている、と言われるが、緑化の工程は最後の最後。確かに先行き不安である。しかし、ただぼーっと待っていても始まらない。植物はわれわれや家畜の食料になり、薬になり、工芸の原料ともなる。さらにCO2を吸収し、O2を作り出し、安らぎの景観も演出してくれる。効用は数えきれないが、われわれ緑化関係者はその意義を認識して大いに宣伝し世論を形成することで、社会構造を変えていく時が訪れたと思われる。

柴田忠裕

出題者:柴田忠裕

千葉県生まれ。新潟大学農学部、同大大学院農学研究科卒業後、現千葉県農林総合研究センター花植木研究室に勤務し、コニファーの栽培技術や屋上緑化素材であるマット植物、植木盆栽類の輸出技術の開発にあたる。平成26年3月に定年退職し、現在は(公社)千葉県園芸協会種苗センターセンター長、花卉懇談会会長を務める。

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