バイオフィリアの考えを取り入れた医療機関
水口 真理子氏
日本ガーデンセラピー協会理事。1987年コクヨ㈱に入社。オフィスやホテルなどのリニューアル業務を行う。2000年、ラピス㈱インテリア部門の責任者として数々の医療案件に携わる。2013年、メディカル・スペースデザイン㈱(現 メディカル・デザイン㈱)を設立。現在は千葉大学園芸学部で福祉医療施設におけるバイオフィリックデザインを研究中。
スマートフォンの普及によって手軽にきれいな写真を撮ることができるようになり、SNSにアップするためのいわゆる「映え写真」を求める人が増えてきました。病院や歯科医院、高齢者施設でも「映えスポット」を設置するところが増えています。
しかし、それは単に流行を追いかけているのではありません。人間は元来自然と触れ合いたい性質を持っているという説を「バイオフィリア」といいます。自然は人の心身に大きな影響を与え、健康や幸福感をもたらし、精神的にも開放されて、自己免疫力を高める効果が期待できると考えられているのです。
この事実は徐々に認知が広まっており、医療機関では「エビデンスに基づいた健康効果がある」と自信をもって取り入れています。医療機関を訪れる患者さんだけでなく、そこで働くスタッフの健康も意識して、その空間にいるだけで安らぎを感じるように工夫された実例をご紹介したいと思います。
1 バーチャル天井
天井に設置したウィンドウディスプレイに晴れ渡る青空と白い雲、流れる雲や風になびく木々など動きのある自然の風景を楽しむこともできます。「見上げる」という行為は自然と息を吸い込み深呼吸したときと同じく、気持ちをリラックスさせてくれる効果があります。
2 アクアリウム
光を受けてキラキラ光る水の揺らぎ、水流になびく水草、元気に泳ぎ回る小魚。アクアリウムは癒しの要素をいくつも含んでおり、自然が生み出す心地よさを水槽の中に再現してくれる素晴らしいツールです。
3 観葉植物
待合で時間を過ごす人々がリラックスした気持ちになるようにグリーンがいくつも配置されています。立っている時、座っている時、待合のどの位置からもグリーンが視界に入るように計算されています。
4 壁面に大規模フェイクグリーン
パーティションで区切られた歯科医院の診療ブースです。グリーンは壁の高い位置にあるので、それぞれのブースから見上げることができ、緊張をほぐす役割を担っています。
5 坪庭
デッドスペースの有効利用で、暗くなりがちな廊下に坪庭を作り、ライトアップしました。石畳と苔によって和風の趣のある空間を演出しています。鏡の効果で2倍の面積になり奥行き感がうまれました。