緑を取り入れた心地よい空間が求められる

日本ガーデンセラピー協会

ガーデンセラピーのかたち

コロナ禍や働き方改革により、ガーデンセラピーの効果は改めて見直されている。
日本ガーデンセラピー協会の理事が、それぞれの分野から見たガーデンセラピーを執筆する。

vol.04
緑を取り入れた心地よい空間が求められる

百瀬 伸夫

武蔵野美術大学造形学部建築学科卒㈱電通 環境設計部長、㈱ロッテ 専務取締役を経て現在、(一社)IKIGAIプロジェクト理事、(一社)日本ガーデンセラピー協会副理事長、㈱タカショー取締役ほか。まちづくり、中小企業支援、産業政策、高齢者就労など自治体の委員等を務める。

自然との共生に注目が集まる
緑を取り入れた空間づくり

働く空間に緑を取り入れ、快適な環境に整えることで、オフィスやコワーキングスペースでの生産性や創造性を向上させる企業や、商業空間でも緑や自然との触れ合いに力を注いでいる例が多く見られるようになってきました。

その背景には、人間は本能的に自然とつながりたいという欲求があることや、コロナ禍で働き方が変わり、オフィスや自宅での時間・空間のあり方、さらにライフスタイルそのものが大きく進化したことも挙げられます。

自然と共生することで得られる「幸福度」「生産性」「創造性」の研究が進み、視野に入る植物の割合を示す「緑視率」や、高質自然音がストレス値を低下させる効果なども検証されています。そこで、緑を取り入れ、最近注目されている事例をご紹介します。

①「HANA・BIYORI」
スターバックスコーヒー

東京郊外の遊園地よみうりランドに併設された自然とエンターテイメントが融合した新感覚フラワーパーク「HANA・BIYORI」に注目が集まっています。中でも植物園内日本初出店のスターバックスコーヒーでは、「New Lifestyle with coffee」をテーマにした、ボタニカル空間の中でゆっくり飲食が楽しめる点が人気です。緑と光と水で構成され、プランターシャンデリアと水盤からの水の響く音、天井から降り注ぐ柔らかい光に囲まれた空間は時を忘れて癒やされます。

スターバックスコーヒーの店内
スターバックスコーヒーの店内

②緑と水で心が開放される
「GREEN SPRINGS」

東京都立川市のGREEN SPRINGSは、「ウェルビーイング」をテーマにした「ウェルビーイングタウン」です。中央広場(約1万㎡)は緑と水が交差する「まちの縁側」と位置づけられ、ビオトープ、キャノピー、噴水、カフェ&リビングルーム、音楽ホール、芝生広場などが配されています。ホールに沿って水が流れる全長120mの階段式「カスケード(連なった滝)」は子どもたちの人気スポットになっています。

中央広場
中央広場
滝「カスケード」
滝「カスケード」

③緑に覆われた圧巻の屋外庭園
「スキップテラス」

東京港に近いスマートシティ「東京ポートシティ竹芝」の2~6階低層部に設けた「スキップテラス」には、「雨・水・島・水田・香・菜園・蜂・空」をテーマにした植物多様性に配慮した庭を配し、「竹芝新八景」を展開しています。オフィス階で働く人にとどまらず、施設を訪れる人や近隣住民に居心地よい空間を提供し、「スキップテラス」3階デッキには、緑に映えるカラフルなガーデンファニチャーが配されています。

屋外庭園「スキップテラス」
屋外庭園「スキップテラス」
3階のデッキ
3階のデッキ

④森の「縁側」のコミュニティ施設
「田園調布せせらぎ館」

東京都太田区立の「せせらぎ公園」内に、新たなコミュニティ施設「せせらぎ館」が2021年1月にオープン。図書サービスコーナーとせせらぎ文庫、多目的室・集会室、カフェなどがあり、同館を設計した建築家の隈研吾氏は「自然と一体になれる場所を作ることができた。区民に親しまれ、愛され育ってほしい」と語っています。せせらぎ館で読書や勉強する利用者には緑の光がふりそそぎ、開放感いっぱいの空間となっています。

せせらぎ館
せせらぎ館

⑤テレワーク・フリーアドレスに
緑豊かな空間が不可欠

多様な働き方が現実となる今日、在宅勤務やコワーキング環境を整える動きが活発化しています。テレワークシステムなどを提供する㈱フォンアプリ社では、オフィス空間に緑とアウトドア感覚を取り入れ、テレワーク・フリーアドレスにふさわしい新しい感性に満ちた働き方とオフィス空間を提案。家具はスノーピーク社と提携し、レイアウト変更がしやすいキャンプ用の軽い椅子・テーブルを採用しています。

フォンアプリ社のオフィス空間
フォンアプリ社のオフィス空間
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